Sweetgreenが自動化キッチン技術Spyceを1億8640万ドルで売却。注目すべきは、買い手のWonderが描く壮大な構想だ。Grubhub、Blue Apronに続く今回の買収で、マーク・ロアは「テック駆動のフードプラットフォーム」の実現に近づいている。
Sweetgreenとは:テック志向のサラダ専門チェーン
Sweetgreenは、2007年設立の米国ファストカジュアル・サラダ専門チェーンだ。健康志向の都市部消費者に、地元産の新鮮な食材を使ったメニューを提供する。
特徴はテクノロジーへの積極投資だ。モバイルオーダーの早期導入、自動化キッチンへの大胆な賭け。2021年にはナスダックに上場し、テック企業としての側面を強調してきた。
その戦略は今、岐路に立っている。
Sweetgreenの苦境:3四半期連続の売上減
Restaurant Diveの報道によれば、Sweetgreenは3四半期連続で既存店売上が減少している。第3四半期は9.5%減と落ち込みが加速した。
損失も深刻だ。第3四半期の損失は3600万ドル(約54億円)に達し、マージンはマイナス21%。前年同期と比較して大幅に悪化している。
この逆風に対処するため、Sweetgreenは厳しい決断を下してきた。サポートセンターチームの既存ポジションと新規ポジションの10%を削減。さらに、人気商品だったRipple Friesを廃止した。オペレーションが複雑すぎたためだ。
そして今回、2021年に約7000万ドルで買収したSpyceを、1億8640万ドル(約280億円)で売却することを決めた。
売却内容:現金1億ドル + Wonder株8640万ドル
このたび発表された取引によれば、Sweetgreenは現金1億ドル(約150億円)とWonder株8640万ドル相当(約130億円)を受け取る。Wonder株の価格は、同社の最新ファンディングラウンドの1株あたり価格に基づいている。
重要なのは、Sweetgreenが引き続きInfinite Kitchen技術を使用できることだ。売却の一環として、SweetgreenとSpyceは供給・ライセンス契約を締結した。これにより、Sweetgreenは売却後も自社レストランにInfinite Kitchenを展開し続けることができる。
ジョナサン・ネマンCEOは、「技術は依然として当社のスケーリング努力の中心だ」と述べている。
買収の一環として、共同創業者のマイケル・ファリド、ケール・ロジャース、ブレイディ・ナイト、ルーク・シュルーターを含む約38名のSpyce従業員がWonderに移籍する。
Wonderの野望:「ロボティクスとインフラを所有するテック駆動フードプラットフォーム」
Wonderは、マーク・ロアが率いるフードホール兼配達企業だ。2025年5月と2024年3月に大規模な資金調達を実施し、現在約80拠点を展開中。同社の成長戦略の中心は、積極的な買収にある。
2023年:ミールキット企業Blue Apronを買収。これにより、家庭向けの食材配達インフラを手に入れた。
2024年後半:配達プラットフォームGrubhubを6億5000万ドル(約975億円)で買収。これは巨大な配達インフラの獲得を意味した。
2025年:自動化キッチン技術Spyceを1億8640万ドル(約280億円)で買収。
プレスリリースによれば、これらの買収により、Wonderは「ロボティクスとインフラの両方を所有するテック駆動のフードプラットフォーム」になる準備を整えている。
Infinite Kitchen技術とは
Spyceが開発したInfinite Kitchenは、ロボティクスを活用した自動調理システムだ。
仕組みはシンプル: 食材の計量と配置を自動化し、最後の仕上げだけを人間のスタッフが担当する。1時間に約500オーダーを処理でき、ピーク時でも5分以内に完成する。
効果も明確だ: 従来店舗と比較して、7%の人件費削減と1%の原価改善を実現。マサチューセッツ州ヒンガム店は初月で30%のマージンを記録した(従来店は26%)。顧客調査では90%がポジティブな体験と回答している。
Sweetgreenは2023年5月に最初の店舗をイリノイ州ネイパービルにオープン。2024年末時点で12店舗に展開し、ニューヨークのウォール街やシカゴのウィリスタワーなど高稼働店への改装でも成功を収めていた。
以下の動画で、Infinite Kitchenの仕組みを確認できる:
Wonderの戦略:配達、ミールキット、自動化を統合
Wonderの買収戦略には、明確なパターンがある。
Grubhub:レストランから消費者への配達インフラ。
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Blue Apron:家庭向けのミールキット配達。
Spyce:ロボティクス・自動化キッチン技術。
これらを統合すれば、何が生まれるか。
食材の調達から調理、配達までを一貫して管理できる「垂直統合されたフードプラットフォーム」だ。Grubhubの配達網を使い、Blue Apronの食材供給チェーンを活用し、Spyceの自動化技術で効率的に調理する。
マーク・ロアは、かつてWalmart eCommerceのCEOを務め、Jet.comを30億ドル以上でWalmartに売却した経歴を持つ。彼は、テクノロジーとロジスティクスを組み合わせることで、巨大市場を制覇できることを知っている。
今回のSpyce買収は、その構想の最後のピースかもしれない。
Sweetgreenの今後:生き残りをかけた選択
Sweetgreenにとって、Spyceの売却は苦渋の決断だ。
同社は売却益を「主要な優先事項に再投資し、成長と収益性に焦点を絞る」ために使うと述べている。3四半期連続の既存店売上減少に見舞われた今、キャッシュが必要だった。
興味深いのは、SweetgreenがInfinite Kitchen技術を手放していないことだ。ライセンス契約により、引き続き自社店舗に展開できる。技術の所有権は失ったが、使用権は保持した。
これは、Sweetgreenが依然としてInfinite Kitchenを競争優位の源泉と見なしていることを示している。自動化は諦めない。しかし、技術開発の負担は手放す。
一方、Wonderは、買収したすべてのパーツを組み合わせて、飲食業界の新しい巨人になろうとしている。
2021年に7000万ドルだった技術が、4年後に1億8640万ドルになった。その真の価値が発揮されるのは、これからかもしれない。



