テクノロジー 2025年11月29日

Text by SPARK Daily

Rivianのスピンオフ「ALSO」が発表。「800Wh」を積んだ「走る電源」

Rivianのスピンオフ「ALSO」が発表。「800Wh」を積んだ「走る電源」

電気自動車メーカーRivian(リビアン)からスピンオフした企業「ALSO」が、$4500のe-bike「TM-B」を発表した。しかし、これは単なる高級自転車ではない。800Whのバッテリー、ペダル・バイ・ワイヤ、USB-C充電。自動車エンジニアが本気で設計した「車輪が2つの電気自動車」だ。

リビアンの「ステルスプログラム」が生んだ革新

リビアンの社内には数年前から、誰も知らない小さなチームがいた。電動ピックアップトラックやSUVを作る会社の片隅で、彼らはマイクロモビリティの未来を密かに設計していた。

2022年、リビアンは電動自転車とスクーターの商標を出願した。そして2024年、このプロジェクトは「ALSO」として正式にスピンオフした。リビアンは少数株主として残り、ALSOは独立企業として動き始めた。

これは孤立した動きではない。フォードやGMも数億ドル規模でマイクロモビリティ企業に投資している。自動車メーカーが「最後の1マイル」の輸送に注目し始めたのだ。都市部での短距離移動、渋滞の回避、環境負荷の削減。e-bikeは、自動車メーカーにとって次の戦場になりつつある。

そして2025年10月、ALSOはついに「TM-B」を公開した。

800Whバッテリーと双方向USB-C充電の意味

TM-Bの中心には、四角いブロックがある。ここにバッテリー、モーター、そしてペダル・バイ・ワイヤのジェネレーターが収まっている。

最も注目すべきは、業界で初めて本格的にUSB-C充電を採用したことだ。240WのUSB-Cケーブルで、800Whのバッテリーを3時間強でフル充電できる。

職場のMacBook充電器や実家の携帯充電器でも充電でき、専用充電器を持ち歩く必要がない。さらにバッテリーを取り外せば800Whの外部電源として使用できるため、アパートの3階に住んでいても、バッテリーだけを持って階段を上ればいい。

双方向充電も可能だ。走行中にスマートフォンを急速充電できる。ALSOのエンジニアは冗談交じりに言った。「エクササイズバイクとして使って、バッテリーを充電するモードも数日で作れますよ」。ソフトウェアをフルスタックで所有しているからこそできる柔軟性だ。

自動車メーカーの強みは、バッテリー管理技術にある。リビアンが培った知見が、TM-Bには凝縮されている。

「ペダル・バイ・ワイヤ」が変える乗り心地

TM-Bには、チェーンがない。ペダルを踏むと、発電機が電気を生成し、その電気がモーターを駆動する。モーターの動力はベルトを介して後輪に伝わる。

通常の自転車はペダルとチェーンが物理的に繋がっているが、TM-Bは違う。ペダルを踏むと発電し、その電気でモーターが回る。ペダルと後輪の間に機械的な接続はなく、すべて電気信号で制御される。この仕組みを「ペダル・バイ・ワイヤ」と呼ぶ。

効率性の損失は? ALSOは「ほとんど無視できる」と答える。それよりも、得られるメリットが圧倒的だ。

180Nmのトルク、10倍のアシスト倍率。200ポンド(約90kg)の体重でも、0から20mph(約32km/h)まで、ほぼ瞬時に加速する。Sur RonやTalariaといったオフロード電動バイクに匹敵する加速力だ。

ALSOは「車よりも速く発進できれば、ライダーが横から衝突される危険が減る」と説明する。子どもたちはSur Ronのような加速を好むが、親は安全を求める。TM-Bは、その両方を満たす。Class 2-3のe-bikeとして、スロットルで20mph、ペダルアシストで28mph(約45km/h)まで出せる。

そして、盗難防止システム。電源を切ると、ペダルは空転する。まるでチェーンが外れたように。後輪はロックされ、電子機器は位置追跡以外すべて無効化される。盗む意味がない。

自転車ではなく「プラットフォーム」

ALSOは、TM-Bを「e-bikeプラットフォーム」と呼ぶ。これは正確だ。

シートは数秒で交換できる。通常のバイクシート、ベンチシート、カーゴバイク用シート。ホイール、フェンダー、カラーリングも変えられる。1台の自転車が、カーゴバイク、ストリート通勤用、オフロード用に変身する。

さらに興味深いのは、各シートがユーザープロファイルに紐付けられることだ。家族で1台のTM-Bを共有し、それぞれが自分のシートを持つ。シートを取り付けると、自動的にそのユーザーの設定が読み込まれる。

24インチのタイヤは市販品を使える。フロントとリアに12mmのフルサスペンション。柔らかく調整可能で、大きなタイヤと組み合わさって、驚くほど滑らかな乗り心地を実現する。

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Alpha Waveヘルメット:頭部の「エアバッグ」

ALSOは、TM-Bと同時に専用ヘルメット「Alpha Wave」も発表した。

最大の特徴は、RLS(Release Layer System)だ。4つのパネルが、衝撃時に開放される。回転衝撃を軽減する仕組みで、従来のヘルメットとは一線を画す。頭部の「エアバッグ」と言える。

しかし、Alpha Waveはただの安全装備ではない。4つのウインドシールド付きスピーカーと2つのノイズキャンセリングマイクを搭載している。音楽を聴き、通話し、ターンバイターンのナビゲーションを受け取る。すべてTM-Bのインターフェースと連携する。

HighBarシステムは、片手でフィット感を調整できる。統合ライトは、視認性を高める。

ALSOは、スマートフォンホルダーをあえて付けない。「NEST風のインターフェースですべて完結する」と主張する。これが受け入れられるかは、まだわからない。

4500ドルという価格が意味するもの

Launch Edition(2026年春発売)とPerformance Model(2026年半ば発売)は4500ドル。Base Model(2026年後半発売)は約3500ドルの見込みだ。

比較すると、Lectric XPは1000ドル。VanMoof S5は2498ドル。TM-Bは、プレミアムe-bike市場への挑戦だ。

米テック誌『Electrek』のレビュアーは言う。「4500ドルのe-bikeを買うなら、TM-Bが現時点で最良の選択だと思う」。しかし同時に、「80%の人々は候補リストから外すだろう」とも認める。

ALSOは、それを承知している。全員がカローラに乗るわけではない。プレミアム体験を求める市場は、確実に存在する。

さらに、ALSOは自転車レーン対応のクアッド(四輪車)も発表した。Amazonと提携し、ヨーロッパとアメリカの都市部で配送に使用する計画だ。
e-bikeに加えてクアッドも展開するALSOは、都市マイクロモビリティ市場への本格参入を目指している。2026年春、TM-Bの市場投入でその戦略が試されることになりそうだ。

Source: electrek.co ほか

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