ウェルネス 2025年11月16日

Text by SPARK Daily

「56g vs 154g」1日のタンパク質摂取量、どちらが正しいのか

「56g vs 154g」1日のタンパク質摂取量、どちらが正しいのか

フィットネス系インフルエンサーが「体重1kgあたり2.2g以上」を推奨する一方、公式ガイドラインは0.8g。3倍近い開きがある。いったいどちらが正しいのか? さらに興味深いのは、日本では高齢者の10%がタンパク質不足でフレイル(虚弱)状態に陥っていることだ。過剰摂取と不足。この両極端な現象は、何を意味しているのだろうか?

公式ガイドライン vs フィットネス業界の主張

スナックバー、ヨーグルト、アイスクリーム、さらにはボトルウォーターまで。食品メーカーは、ほぼすべての製品にタンパク質を追加する方法を見つけ出した。

タンパク質強化食品とプロテインサプリメントは、いまや数百億ドル規模の市場を形成している。インフルエンサー、一部の研究者や医師が、高タンパク質食を「筋力と長寿の秘訣」として宣伝する。

しかし、人々が本当に必要とするタンパク質の量は、いまだに議論の的だ。

世界保健機関(WHO)や米国栄養学会の公式ガイドラインは、体重1kgあたり約0.8gを最低限の推奨量としている。70kgの成人なら、調理した鶏肉250g(タンパク質約68g相当)程度だ。

一方、ウェルネス業界では、その2倍以上を摂取するよう勧める声が強まっている。多くの科学者はその中間に位置し、SNS上で拡散されるアドバイスに異議を唱えている。

「本当にイライラします。彼らの主張を裏付ける証拠がないからです」と、ニュージーランドのオタゴ大学で運動栄養学を研究するキャサリン・ブラックは言う。SNS上の超高タンパク質推奨を指してのことだ。

科学が示す「最適範囲」は1.2-1.6g/kg

研究によれば、タンパク質の必要量は人によって異なり、生涯を通じて変化する。そして、その必要量を満たすために何を食べるかも重要になる。

「SNSでは、みんながタンパク質を心配して、あらゆるものにプロテインパウダーを入れています」とブラックは言う。

では、科学が示す最適な量は?

「RDA(推奨栄養所要量)は目標ではなく、検出可能な欠乏を防ぐための最低限の量にすぎません」と、イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校でタンパク質必要量を研究するドナルド・レイマンは言う。

レイマンの研究によれば、最適な範囲は体重1kgあたり1.2〜1.6gだという。

これは特に、加齢とともに筋肉量が減少する高齢者、特定のアスリート、筋肉を増やそうとしている人々にとって重要だ。

筋トレに関しては、タンパク質摂取が効果を高めることが確認されている。2017年のシステマティックレビューでは、このタイプのトレーニングを行う人々において、プロテインサプリメントが筋肉増加と筋力向上を促進することが判明した。

しかし、体重1kgあたり1.6gを超えても、さらなる効果は得られなかった。

一方、フィットネスインフルエンサーの中には、体重1kgあたり2.2gの摂取を推奨する者もいる。「ほとんどの人にとって、それは単に過剰です」と、イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校の栄養・運動研究者ニコラス・バードは言う。

腎臓病患者を除けば、ほとんど害はない。しかしバードは付け加える。「体が食物タンパク質を無駄にすることに非常に長けた、非効率的なシステムを作り出すだけです」

日本の高齢者が直面する「タンパク質不足」

興味深いのは、プロテインブームの陰で、正反対の問題が進行していることだ。

厚生労働省の国民健康・栄養調査によれば、日本の高齢者の約10%がタンパク質摂取不足の状態にある。これは、フレイル(虚弱)と呼ばれる状態につながる。

フレイルは、加齢に伴う筋肉量の減少、体力の低下、病気への抵抗力の低下を特徴とする。転倒、骨折、要介護状態のリスクが高まる。

日本の65歳以上人口は約3,600万人。その10%がタンパク質不足なら、約360万人がリスクにさらされている計算だ。

なぜこれほど多くの高齢者がタンパク質不足に陥るのか?

一つの要因は、加齢に伴う食欲の低下だ。高齢者は食事量が減り、結果としてタンパク質摂取量も減少する。「高齢者は食欲が低下することが多いため、タンパク質摂取に特に注意を払うことが重要です」とバードは言う。

もう一つの要因は、知識不足だ。多くの高齢者は、自分がどれだけタンパク質を必要としているか、どの食品に多く含まれているかを知らない。

1.2g/kgが高齢者を守る

では、高齢者はどれだけタンパク質を摂取すべきなのか?

70〜79歳の成人2,066人を対象とした観察研究では、最も多くタンパク質を摂取した群(体重1kgあたり約1.1g)は、3年間の追跡期間中、最も少なかった群(約0.7g/kg)に比べて、除脂肪体重の減少が40%少なかった。

「高齢者にとって、1.2g/kgは少し余分な保護を与えるだけです」とバードは言う。

バードが強調するのは、サプリメントではなく、通常の高タンパク食品を日常的に取り入れることだ。「私たちの生活に高タンパク食品を普通に組み込むだけでできることです」

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例えば、卵、魚、肉、大豆製品、乳製品を毎食に含める。朝食に卵、昼食に魚、夕食に肉か豆腐。これだけで、1日に必要なタンパク質は十分に摂取できる。

朗報もある。2008年の観察研究では、タンパク質を適切に摂取した群は、筋肉量の減少が40%少なかった。フレイルは可逆的だ。適切な栄養と運動で、健康な状態に戻ることができる。

プロテイン神話を作ったのは誰か

それでは、なぜフィットネス業界は2.2g/kgという数字を推奨するのか?

「タンパク質必要量の増加という神話は、健康専門家を含む大衆の想像力に浸透しており、食品業界によって都合よく強化されてきました」と、ブラジルのサンパウロ大学で栄養・食品政策を専門とするフェルナンダ・マロコスは言う。

プロテインブームは、主に高タンパク食品やサプリメントの積極的なマーケティングによって推進されてきた、とバードは指摘する。

数百億ドル規模の市場。SNSでの大量の広告。フィットネスインフルエンサーとの提携。これらすべてが、「もっとタンパク質を」というメッセージを拡散してきた。

一部の専門家は、人々が十分な量を確保できるよう、高めの目標を推奨することがあるとバードは言う。しかし、現在のプロテイン熱狂は、科学的根拠よりもマーケティングによって推進されている。

本当に必要な人、不要な人

結論として、誰がどれだけタンパク質を必要としているのか?

高齢者(65歳以上):
体重1kgあたり1.2gが推奨される。筋肉量の維持、フレイル予防のため。サプリメントは不要。通常の高タンパク食品で十分。

アスリート・筋トレ実施者:
体重1kgあたり1.2〜1.6g。これ以上は効果なし。

健康な成人:
体重1kgあたり0.8〜1.0gで十分。バランスの取れた食事で達成可能。

腎臓病患者:
過剰なタンパク質摂取は腎臓に負担をかける可能性がある。医師の指導が必要になる。

そして最も重要なのは、プロテインパウダーや強化食品に頼る必要はないということだ。卵、魚、肉、大豆製品。これらを毎日の食事に取り入れるだけで、必要な量は満たせる。

「高齢者にとって、1.2g/kgは少し余分な保護を与えるだけです」とバードは言う。決して難しいことではなさそうだ。

Source: Nature ほか

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