11月8日、ニューヨークのロックフェラーセンターに今年のクリスマスツリーが到着した。高さ23メートル、重さ11トンのノルウェースプルース(トウヒの一種)だ。しかし、このツリーは単なる季節の装飾ではない。1931年、大恐慌の最中に建設労働者たちが灯した希望の象徴であり、94年間にわたってニューヨークの冬を彩り続けてきた伝統だ。
1920年代に植えられたツリー
今年のツリーは、ニューヨーク州アルバニー郊外のイースト・グリーンブッシュから約240キロの旅をしてマンハッタンに到着した。AP通信の報道によれば、このツリーを寄付したのはジュディ・ラスさんとその家族で、1920年代に夫の曽祖父母が植えたものだという。
11月8日の朝、30ロックフェラープラザ前で、クレーンを使った慎重な作業が行われた。コーヒーカップを手にスマートフォンを構えた群衆が見守るなか、11トンのスプルースが有名なスケートリンクを見下ろす位置に据えられた。
ツリーは間もなく、約8キロのワイヤーに取り付けられた5万個以上のLEDライトで飾られ、重さ約408キログラムのスワロフスキー製クリスタルスターが頂上に輝く。点灯式は12月3日、カントリーミュージックスターのリーバ・マッキンタイアの司会で生放送され、翌年1月中旬まで展示される予定だ。
1931年、大恐慌が生んだ伝統
ロックフェラーセンターの公式サイトによれば、最初のクリスマスツリーは1931年、大恐慌の真っ只中に登場した。ロックフェラーセンターの建設現場で働いていたイタリア系アメリカ人労働者たちが、クリスマスイブに高さ約6メートルの控えめなバルサムファー(モミの一種)を立て、手作りの飾りで装飾した。
労働者たちは給料を出しあい、家族たちが手作りした装飾でツリーを飾った。当時のアメリカは経済的な絶望のなかにあったが、このツリーは「集いの場所であり、周囲で起きていることを映し出す鏡」となった。
1933年、初めての正式な点灯式が行われた。高さ15メートルのツリーが灯され、2年後にはスケートリンクが広場に開設された。この伝統は以来、途切れることなく続いている。
第二次世界大戦中の1942年には、1本の大きなツリーの代わりに、赤・白・青の国旗の色で飾られた3本の控えめなツリーが立てられた。1944年から1945年にかけては、灯火管制規則のため点灯されなかった。
スクリーンに映るニューヨークの冬
ロックフェラーセンターのクリスマスツリーは、ニューヨークの冬を象徴する風景として、数々の映画に登場してきた。
最も印象的なのは、1989年の『恋人たちの予感』だろう。ノーラ・エフロンが脚本を手がけ、ロブ・ライナーが監督したこの作品では、ビリー・クリスタルとメグ・ライアンがロックフェラーセンターのスケートリンクで滑るシーンが登場する。輝くツリーを背景に、二人の関係が深まっていく様子が描かれた。
他にも『ホーム・アローン2』『エルフ サンタの国からやってきた』など、数々の映画に登場。これらを通じてロックフェラーセンターのクリスマスツリーは、単なるニューヨークのランドマークを超え、世界中の人々が抱く「ニューヨークの冬」のイメージそのものとなった。
役目を終えたツリーは住宅建材に
ホリデーシーズンが終わると、ツリーには新たな使命が与えられる。2007年以降、ロックフェラーセンターのクリスマスツリーは、ハビタット・フォー・ヒューマニティに寄付され、住宅建材として再利用されてきた。
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「毎年2007年以降、ロックフェラーセンターのクリスマスツリーから製材された木材は、家族がハビタット住宅を建てるのを支援するために使用されてきました」と、非営利団体は説明している。ノルウェースプルースから製材された木材は、これまで数多くの家庭の建設に貢献してきた。
この取り組みは、児童書『The Carpenter's Gift』(デイヴィッド・ルーベル著、ジム・ラマーシュ絵)にも描かれており、希望の象徴としてのツリーの物語を次世代に伝えている。
年間1.25億人が訪れる「希望の木」
ロックフェラーセンターの統計によれば、展示期間中、毎日50万人以上がツリーを訪れる。年間では推定1億2500万人がこの伝統を目にするという。
1997年以降、点灯式はNBCで生中継され、数億人の視聴者に届けられている。今年の点灯式も、12月3日午後8時から10時(東部時間)に放送される予定だ。
ジュディ・ラスさんは地元ラジオ局1010 WINSに対し、「これがニューヨーク市のクリスマスの中心になるなんて信じられない」と語った。1920年代に植えられたツリーが、100年近くを経て世界中の人々に希望を届ける。
1931年、大恐慌の闇のなかで労働者たちが灯した小さな光は、94年の時を経て、ニューヨークの冬を象徴する巨大な輝きへと成長した。この伝統は、時代を超えて希望を灯し続けている。


