「マックス」が2025年、アメリカの犬の名前ランキング1位に返り咲いた。2024年に「マイロ」に首位を奪われてから、わずか1年での復活だ。しかし、本当に注目すべきは「ハンク」だろう。35位から2位へ、33ランクの急上昇。犬の名前に、いったい何が起きているのか?
「マックス」の復活
先日アメリカン・ケネル・クラブ(AKC)が発表した最新データによれば、オス犬の名前ランキング1位に「マックス」が返り咲いた。
「マックス」は2022年と2023年、2年連続で首位を守っていた。しかし2024年、「マイロ」がこれを上回り、王座から引きずり降ろした。ところが2025年、「マックス」は再び頂点へ。一方の「マイロ」は12位まで転落している。
AKCは世界最大の純血種・雑種犬の登録機関だ。このランキングは、同機関に登録された犬のデータから算出される。数十万頭規模の実データが反映されている。
「ペットの名前を選ぶことは、犬を迎える過程で最も楽しく、重要なステップの一つです」と、AKC会長兼CEOのジーナ・M・ディナルドは述べる。「多くの人が、ペットにぴったりの名前を選ぶために、かなりの時間をかけて考えています」
「ハンク」急上昇の謎
しかし、より興味深いのは「ハンク」だろう。
2024年、この名前は35位だった。それがわずか1年で2位へ。33ランクの急上昇だ。これは近年の犬名ランキングのなかで最も劇的な変動のひとつといえる。
なぜ「ハンク」なのか?
一つの仮説は、ポップカルチャーの影響だ。映画やドラマに登場するキャラクター名が、ペットの名前として採用されるケースは珍しくない。ただし、2024年から2025年にかけて「ハンク」という名の人気キャラクターが急増したという明確な証拠はない。
もう一つの可能性は、レトロ・クラシック回帰のトレンドだ。「ハンク」は、1940-50年代にアメリカで人気だった男性名。いわば「おじいちゃんネーム」である。しかし近年、人間の赤ちゃんの名前でも、こうしたクラシックな名前が再評価されている。犬の名前も、同じ波に乗っている可能性がある。
トップ10を見ると、「テディ」(3位)、「クーパー」(4位)、「ガス」(5位)、「デューク」(7位)、「チャーリー」(9位)と、人間らしい名前が並ぶ。これらはすべて、人間の男性に付けても違和感のない名前だ。
「人間化」トレンド
犬の名前が人間に近づいている。これは、ペットの社会的地位の変化を反映している。
ペットフード協会の2024年調査によれば、アメリカの飼い主の83%が、ペットを「家族の一員」と考えている。単なる「動物」ではなく、「家族」だ。
家族には、それにふさわしい名前が求められる。「ポチ」や「タマ」のような、明らかに「動物用」の名前ではなく、人間と同じような名前だ。そうした心理が、ランキングに表れている。
AKCのディナルドも、「名前選びにかける時間が増えている」と指摘する。かつては数分で決めていた名前を、今では数日、時には数週間かけて選ぶ飼い主もいるという。
これは、ペットへの投資全般の増加とも一致する。アメリカペット製品協会のデータによれば、2024年のペット関連支出は過去最高の1,470億ドル(約21兆円)に達した。医療、食事、グルーミング、すべてが「人間並み」になっている。
名前も、その一部だ。
メス犬は安定、オス犬は変動が激しい理由
興味深いのは、メス犬とオス犬の名前トレンドに明確な違いがあることだ。
メス犬のトップ4は、2024年から2025年にかけて変動がない。「ルナ」「ベラ」「デイジー」「ルーシー」。この順位は2年連続で固定されている。
一方、オス犬は激しく変動する。「マックス」と「マイロ」の入れ替わり、「ハンク」の急上昇。毎年、順位が大きく動く。
なぜこの違いが生まれるのか?
ひとつの説は、文化的なジェンダー規範の影響だ。女性の名前には「優美さ」「安定性」が求められる傾向があり、定番が選ばれやすい。一方、男性の名前には「個性」「強さ」が求められ、トレンドに敏感になる。
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もうひとつの要因は、メス犬の名前が「花」や「自然」に由来することが多い点だ。「デイジー」(ヒナギク)、「ルナ」(月)、「ウィロー」(6位、柳)。これらは時代を超えて普遍的なイメージを持つ。
対してオス犬の名前は、ポップカルチャーや時代の雰囲気に左右されやすい。「マーベリック」(8位)は『トップガン』シリーズの影響と見られ、「フィン」(10位)は『スター・ウォーズ』や『アドベンチャー・タイム』のキャラクター名だ。
次に来る名前は何か?
2025年のもう一つの注目は、「ルビー」の急上昇だ。
メス犬の名前で、2024年は16位だったこの名前が、2025年には5位へジャンプした。「ルビー」も、「ハンク」と同様、クラシックな名前だ。1900年代初頭に人気だった女性名である。
トレンドは明確だ。クラシック回帰。レトロ。「おじいちゃん・おばあちゃんネーム」の再評価。
これは、人間の赤ちゃんの名前トレンドとも一致する。アメリカ社会保障局のデータによれば、2024年の人間の赤ちゃんの名前でも、「オリバー」「シャーロット」「エリー」といった古風な名前が上位に入っている。
ペットの名前も、人間の名前と同じ波に乗っている。いや、もはや「ペットの名前」と「人間の名前」の境界線は、ほとんど消えかけている。
次に来る名前は何か? おそらく、1940-60年代に人気だった名前だろう。「アーチー」「フローレンス」「ウォルター」。これらが2026年、急上昇するかもしれない。
飼い主の価値観も変化している。かつては「ユニークな名前」が求められたが、いまは「親しみやすさ」「呼びやすさ」が重視される。それは定番への回帰を意味している。
「マックス」の復活は、その象徴かもしれない。


